「頭の中では完璧にわかってるのに、いざ話そうとすると言葉が出てこない」
会議で発言しようとして、結局何も言えずに終わる。メールを書こうとして、3行目で手が止まる。面接で「あなたの強みは?」と聞かれて、頭が真っ白になる。
そんな経験はありませんか?
多くの人は、これを「語彙力不足」だと思い込んでいます。「もっとボキャブラリーを増やせば」「もっと本を読めば」と考える。しかし、何冊ビジネス書を読んでも、状況は変わらない。
なぜか。
答えは単純です。言語化の問題は、言葉の「量」ではなく、思考の「解像度」にあるからです。
この記事では、なぜ多くの人が言語化に失敗するのか、そして思考の解像度を上げることで、どう変わるのかをお伝えします。小手先のテクニックではなく、根本から変える方法です。
言語化できない人の共通点――「考えがまとまってない」のではない
ある営業マネージャーの話です。
彼は部下との1on1で、いつも同じ壁にぶつかっていました。部下が「なんとなくモヤモヤしてます」と言う。「どんなモヤモヤ?」と聞くと、「うーん、なんというか…」と言葉に詰まる。
これ、部下の語彙力が足りないのでしょうか?
違います。問題は「考えがまとまってない」ことではなく、「考えの輪郭が見えていない」ことです。
頭の中には確かに何かがある。でもそれは、モザイク画のようにバラバラなピースが散らばっている状態。ピース同士の関係性が見えていないから、言葉にできないのです。
言語化とは、頭の中に散らばったピースを「一つのカタチ」として認識すること。
これを私は「思考の解像度」と呼んでいます。
解像度が低いと、「なんとなく違和感がある」としか言えない。解像度が高いと、「このプランは短期的には数字が出るが、ブランド価値を毀損するリスクがある」と言える。同じことを感じているのに、表現の精度が全く異なっています。
なぜ思考の解像度が上がらないのか――2つの心理的トラップ
トラップ1:「完璧主義」が言葉を殺す
「ちゃんと言わなきゃ」「誤解されたくない」「バカだと思われたくない」
こうした思いが強い人ほど、言語化が苦手です。なぜなら、頭の中で「検閲」が働いてしまうから。
ある企画職の女性は、会議で意見を求められても黙り込んでしまう癖がありました。聞くと「うまく説明できる自信がないから」と言います。しかし彼女の頭の中には、実は鋭い洞察があったのです。ただ、それを「完璧に」表現できないから、何も言わないことをいつも選択していました。
これは大きな損失です。なぜなら、思考は「外に出す」ことで初めて磨かれるからです。
言語化のコツは、「仮説として話す」こと。
「これは仮説なんですが」「まだ言語化できてないんですが」という前置きを使うだけで、心理的なハードルは下がります。そして、不完全でも外に出した瞬間、対話が始まり、思考が明確になっていきます。
トラップ2:「思考の脱線」が解像度を下げる
もう一つの罠は、考えているうちに話が逸れていくこと。
「あ、でもこれは例外があるな」「そういえばあの件もある」「いや待てよ、こっちの視点もある」…と、思考が枝分かれしていく。そして最終的に、何について考えていたのか、自分でもわからなくなる。
これを防ぐには、「軸を持つ」ことです。比較・構造・因果という3つの型を使うと、思考が脱線しにくくなります。
思考の解像度を上げる3つの型――今日から使える実践法
型1:比較で「違い」を浮かび上がらせる
「このデザイン、いい感じですね」
これ、何も言っていないに等しい。しかし、比較を使うと一気に解像度が上がります。
「前回のデザインは視線誘導が弱かったけど、今回はCTAボタンへの導線が明確で、クリック率が上がりそうです」
違いを言語化することで、「何が良いのか」が明確になる。これが比較の力です。
【実践ワーク】
今あなたが取り組んでいる仕事を、「以前のやり方」と比較してみてください。
比較する際は、以下のような問を持つと応えが自ら立ち上がってきます。
何か変わった箇所は、どんな点ですか?
何が良くなったのでしょうか?
何が課題として残っているのでしょうか?
型2:構造で「全体像」を示す
話が長い人、伝わらない人には共通点があります。それは「構造がない」こと。
「えーと、まずAの話なんですけど、そういえばBも関係してて、でもCの視点も大事で…」
話しがあちこちに飛び火していくと、聞き手は迷子になっていきます。
一方、構造化されていると、聞き手は安心して聞くことができます。
「今回の提案は3つのポイントがあります。1つ目は現状分析、2つ目は解決策、3つ目は実行計画です。まず現状分析から…」
話の地図を最初に示すだけで、伝わり方が劇的に変わります。
型3:因果で「なぜ」と「だから」をつなぐ
「売上が落ちています」
これは事実の報告。しかし、因果を加えると、意味が生まれます。
「売上が落ちています(事実)。理由は、競合が低価格戦略を仕掛けてきたことで、価格比較サイトでの露出が減ったからです(理由)。したがって、価格以外の価値を打ち出すブランディング戦略が必要です(結論)」
事実→理由→結論。この流れを作るだけで、言葉に説得力が生まれます。
思考の解像度を上げるもう一つの鍵――「感覚」を言語化する
ここまで読んで、「なるほど、型を使えばいいのか」と思った方。実はもう一つ、決定的に重要な要素があります。
それは、「感覚」です。
人は論理だけで動いているわけではありません。「なんとなく違和感がある」「この人、信頼できそう」といった直感的な反応が、判断の大部分を占めています。
しかし、この感覚を言語化できる人は驚くほど少ない。
あるコンサルタントは、クライアントとの打ち合わせ後、「なんか今日の雰囲気、おかしかったな」と感じました。しかし、それを言語化できない。「何がおかしかったのか?」を突き詰めると、次のことに気づきました。
「決裁者が最後まで目を合わせなかった。普段は質問が多いのに、今日は相槌だけ。言葉では『いいですね』と言っていたが、声のトーンが平坦だった気がする。そういえば、自分が一方的に話してしまっていた。相手の話を引き出す促しが自分からできていなかったかもしれない・・・」
これが、感覚の言語化です。
言語化できると、では、すぐにどのようなフォローをすればいいかが明確になります。
感覚を言語化するには、「振り返り」が不可欠。
会議が終わった後、3分でいい。「今日、どんな瞬間に何を感じたか?」を書き出してみてください。最初は「なんとなく」しか出てこないかもしれません。でも続けていくと、感覚と言葉がつながり始めます。
これを続けると、リアルタイムでの言語化力が飛躍的に向上します。「あ、今この瞬間、自分は不安を感じている。それは相手の言葉が曖昧だからだ」と、その場で気づけるようになっていきます。
言語化力が変えるのは、コミュニケーションだけじゃない
ここまで読んで、「言語化力って、結局プレゼンとか会議で役立つスキルでしょ?」と思った方。
実は違います。
言語化力が高まると、変わるのはコミュニケーションだけではありません。
意思決定の質が上がる
「なんとなく」で選んでいたものが、「なぜそれを選ぶのか」を明確に説明できるようになります。判断の根拠が言語化されることで、後悔や迷いが減ります。明確な判断から起こした行動は、思い通りにならなかった際の軌道修正にも気づきやすくなります。
自己理解が深まる
「なんでイライラしてるんだろう」が「期待と現実のギャップに苛立っている」と言語化できると、対処法が見えてくる。感情に振り回されなくなります。
行動が変わる
言語化できないものは、実行できません。「このプロジェクトの目的は何か?」を明確に言えないなら、チームは動けない。言語化は、行動の起点です。
つまり、言語化力は「伝える技術」ではなく、「思考そのものを鍛える技術」だと私たちは、考えています。す。
今日から始められる、たった1つの習慣
この記事を読んで、「なるほど、思考の解像度か」と納得した方へ。
最後に、今日から始められる習慣を1つだけお伝えします。
それは、「1日5分の振り返り」です。
会議でも、商談でも、日常会話でもいい。終わった後に3つの質問を自分に投げかけてください。
1. 今日、どんな瞬間に何を感じた?
2. それはなぜ?(理由を3つ挙げる)
3. 次はどうする?(行動を1つ決める)
これだけです。
最初は書けなくても構いません。「なんとなく」しか出てこなくても、それでいいのです。大事なのは、続けること。3週間続ければ、確実に変化が見えてきます。
言語化力は、生まれつきの才能ではありません。訓練で必ず伸びる能力です。
そして、もしあなたが
- もっと体系的に言語化力を鍛えたい
- 自分の思考の癖を客観的に見つめ直したい
- 感覚と思考をつなぐ訓練を受けたい
そう思うなら、エッセンシャルコーチングクラス(ECC)の説明会にお越しください。ECCでは、今回紹介した「思考の解像度を上げる訓練」を、プロのコーチと一緒に実践できます。
言語化力は、あなたの人生を変える武器です。できることから、はじめてみてください。
