やりづらさの正体
先日、あるマネージャーの方からこんな相談を受けました。評価面談のロープレをしたところ、部下を「諭す」ような感覚になってしまい、うまくいかなかったというのです。
評価フィードバックの面談が近づくと、誰でも少し身構えてしまうものです。「きちんと伝えなければ」「分かってもらわなければ」という思いが強くなるほど、面談の空気はどこか説教くさくなってしまいます。
部下を「諭す」感覚の背景には、「言いにくいことを言わなければならない」というプレッシャーがあります。この上司側の心理が前面に出てしまうと、部下も反発したり、素直に受け取れなくなったりして、面談そのものが機能しなくなることがあります。
強者・弱者の構図が生む反発
相手を評価しなければならないという立場は、意識しないうちにお互いの関係を固定してしまいます。評価者が強者で被評価者が弱者、「できている人」と「できていない人」という構図です。
厄介なのは、この構図が認識のズレを生みやすいことです。評価者が「できていない」というジャッジを伝えても、被評価者側に「自分はできている」という自己認識があれば、「あなたに言われたくない」という反発が起きます。あるいは「この人は自分をわかってくれていない」という不信につながることもあるでしょう。
評価面談がうまくいかないとき、見直すべきは伝え方のテクニックではなく、この関係の構図そのものです。

評価者と被評価者ではなく、目的を真ん中に置く
では、どう捉え直せばいいのでしょうか。ヒントになるのは、評価する人・される人という関係ではなく、目的を中心に据えるという発想です。
個人には、目的に対して自らアクションを起こす意志がある――まずそう前提を置きます。人は自分の視点だけでは、自分の課題になかなか気づけません。だからこそ第三者である評価者が入り、本人に見えていない部分を補う。それが評価者の役割だと考えると、面談における関係性は変わってきます。
ジャッジする側・される側ではなく、共通の目的に向かって、見えていないところを一緒に見出していく関係になることが大切です。

評価に根拠が必要な理由
評価面談の目的は、大きく2つに分けられます。一つは利益の分配で、この場合はどんな行動がどれだけ貢献したのかという根拠が求められます。もう一つは成長支援で、決めた目標地点と現在のギャップを明らかにし、次の成長支援策を本人と一緒に確認することが求められます。
どちらの目的であっても、共通して問われるのは「どんな意図を持ってどんな行動を起こし、それがどんな結果につながったか」という裏付けです。ここを説明できなければ、評価は根拠のない話になってしまいます。
たとえば、マネージャーは部門メンバーの給与や報酬について、会社から予算を確保する役割を担うことがあります。その際、会社全体の目標に対してメンバーがどれだけ貢献したのか、その根拠を上層部に示せなければ、給与配分そのものが説明のつかないものになってしまいます。
管理職が担う責任は、この説明責任にほかなりません。本人だけでなく、他部署や上層部に対しても筋の通った説明ができるかどうか。だからこそ、面談で当事者とすり合わせておく時間は欠かせないのです。
面談の冒頭で伝えること
この関係性を実際の面談で成立させるには、まず目的とゴールを最初に共有することが出発点になります。
成績という結果だけを一方的に伝えるのではなく、「今日は何のための時間か」を最初に伝えましょう。そのうえで、現状についてお互いがどう感じているか、認識をすり合わせていきます。目線がずれて見える部分は、単に見ている角度が違うだけかもしれません。そのズレを調整していく時間として、面談を設計してみてください。
おわりに
評価面談で最初につまずくのは、たいていテクニックではなく関係の構図そのものです。評価者vs被評価者ではなく、目的を真ん中に置いた三者関係――本人・評価者・目的――として捉え直す。それが、フィードバックを「受け取ってもらえる」ものに変える第一歩になります。

執筆・編集 鈴木敦子