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コーチングでは「傾聴」や「共感」をしないって本当?―成長を促すプロのコーチング手法

傾聴共感の誤解
目次

「コーチングでは傾聴や共感をしない」「ただの聞き役ではない」といった話を耳にしたことはありませんか?
コーチング=相手の話を聞いて共感するイメージを持つ方は要注意です。クライアントの成長を最大化するうえで欠かせない視点があります。本記事では、コーチングの本質と実践ポイントを詳しく解説します。

1.はじめに

ビジネスパーソンや管理職をはじめ、多くの方がコーチングに興味を持つ中、「コーチングでは傾聴や共感をしない」「ただの聞き役ではない」という話を耳にしたことはありませんか。コーチングといえば、相手の話を聞いて共感するイメージが強いため、不思議に感じる方もいるかもしれません。

しかし、「傾聴や共感をしない」という表現は、決して「傾聴や共感がまったく必要ない」という意味ではありません。実際は、コーチングの本質がクライアントの自律的な行動変容にあることを強調するための言い回しです。本記事では、コーチングの目的や手法を踏まえながら、なぜ「傾聴や共感をしない」と言われるのか、その背景と実践ポイントを解説します。

2.コーチングにおける「傾聴」「共感」の誤解

「傾聴」とは、相手の話を深く理解しようと耳を傾け、その人自身に関心を寄せる行為です。一方、「共感」は、相手の気持ちを自分の内面でも体験しようとする関わり方を指します。ところが、世間で言われる「共感」は単なる「同調」に近いケースが多く見受けられます。たとえば、相手の主張を自分の体験と照らし合わせて「同じだ」と感じ、その感覚を相手に投影してしまう状況です。これは本来の共感とは異なります。

また、相槌・伝え返し・要約などのテクニックが「傾聴」として説明されがちですが、これらはあくまで傾聴スキルの一部にすぎません。「いいね」「すごいね」といったポジティブフィードバックも、一時的に安心感を与える可能性はあるものの、クライアントの本音や問題の本質を十分に探求しなければ、真の変化や成長にはつながりにくいのです。

こうした表面的な関わりではなく、クライアント自身もまだ気づけていない領域を扱い、本人が自ら考え、気づきを得て行動を起こすための伴走を行うのがコーチングです。そのためには、相手の言葉や感情をただ受け取るだけでなく、問いかけやフィードバックを通してクライアントが自分の内面を深く掘り下げられるようサポートする姿勢が欠かせません。

3.コーチングにおける「傾聴」と「共感」の位置づけ

3.1 コーチングの目的はクライアントの自律的,主体的な成長

コーチングやカウンセリング、メンタリングなどの伴走型アプローチでは、まずクライアントが話しやすい環境をつくることが大切です。「傾聴」や「共感」は、そうした安心感を醸成するための基盤といえます。ただし、あくまでクライアントとの関係づくりのベースであり、「思考を深めるための手段」とは別物です。

コーチングの最終目標は、クライアントが自分の課題に気づき、答えを見つけ、行動を起こす力を育むことにあります。このとき、コーチがクライアントの思考を誘導しすぎると、自律性を損なう可能性があるため要注意です。

  • 傾聴・共感はクライアントの気持ちを受けとめるために必要
  • しかし「同情」や「代わりに考えてあげる」ことはコーチングの本質と異なる

傾聴や共感は、クライアントが安心して課題を見つめ直す土台として機能します。

3.2 コーチングで重視される客観的な視点

コーチが共感しすぎると、クライアントの感情に巻き込まれ、本来必要な問いかけや客観視ができなくなるリスクがあります。たとえば、クライアントが「仕事がつらい」と訴えたときに、ただ「それは大変ですね」と寄り添うだけでは、思考を先へ進める機会を失うかもしれません。

  • なぜつらいのか、どうすれば変えられるかを問いかける
  • ときには先入観や思い込みを揺さぶるような質問が必要

共感は重要ですが、コーチは客観的かつ冷静な視点を保ち続け、クライアントの思考を広げる役割を担います。

4.「コーチングで傾聴や共感をしない」と言われる理由

4.1 「傾聴や共感」は目的ではなく手段

「傾聴」や「共感」はコーチングスキルの基本ですが、それ自体がゴールではありません。セラピーやカウンセリングで感情面のサポートが主眼となる場合とは異なり、コーチングの目的は行動変容や目標達成です。

  • 「ただ聞いてもらえてスッキリした」の先に、行動につなげられるかが重要
  • クライアント自身が具体的な行動プランを立てることがゴール

傾聴・共感でクライアントを受けとめたうえで、前進を促す問いかけやフィードバックが欠かせません。

4.2 「共感しすぎる」と思考を奪う

過度な共感は、クライアントが自らの気づきを深めるプロセスを阻害する恐れがあります。たとえば、落ち込んでいる人に「わかるよ、つらいよね」と優しく声をかけるだけでは、問題の本質や解決策を見つめ直すチャンスを失うかもしれません。

  • 「ほかに感じていることはありますか?」と問いかける
  • 「その状況の捉え方を変えるとしたら、どんな可能性がありますか?」と促す

共感による一時的な癒やしだけではなく、解決策や行動プランを見つけ出す手助けをするのがコーチの役割です。

4.3 「傾聴」だけでは解決策が生まれにくい

受け身で相手の話を聞くだけでは、クライアントが自分の中にある答えや可能性を発見しにくいものです。コーチングで質問力やフィードバック力が重視されるのは、そのためといえます。

  • 「その状況を客観的に見ると、どのように映りますか?」
  • 「本当に望んでいるのは何でしょうか?」

単に話を聞くだけではなく、新しい視点や行動へ導く問いかけが必要です。

5.コーチングを実践する際のポイント

5.1 クライアントに「気づき」を促す質問を意識する

コーチングの核心は、クライアントが自分の考えを整理できる問いを投げかけることです。たとえば、以下のステップが参考になります。

  1. 現状を整理: 「今どんな状態ですか?」
  2. 問題の本質を探る: 「その状態を引き起こしている背景には何があると思いますか?」
  3. 新たな視点を提示: 「もし他のやり方を選ぶとしたら、どんな選択肢が考えられますか?」
  4. 行動を促す: 「では具体的に、いつからどのように取り組みますか?」

こういった質問を通じて、クライアントは自分の中にある答えや選択肢に気づきやすくなります。

5.2 傾聴・共感の目的を意識した使い分け

「コーチングでは傾聴や共感をしない」という表現は誤解を招きやすいものの、実際は以下のように上手く活用する必要があります。

  • 傾聴は、クライアントの話を遮らず、安心感を提供する
  • 適度な共感は、「つらかったですね」「それは大変でしたね」といった声かけで感情を認める
  • 次の問いかけにつなげるために「どうしてそう感じたのですか?」など、思考を広げる質問を重ねる

クライアントの主体性を引き出す関わりが大切です。

5.3 「挑戦」を与えるフィードバック

コーチングの良さは、コーチという第三者の視点を借りてクライアントが予想しなかった視点や気づきを得られることにあります。ときには挑戦的な問いかけによって、固定観念を打ち破る後押しをしましょう。

  • 「本当にそのやり方しかないのですか?」
  • 「ほかに選択肢があるとしたら、何が思い浮かびますか?」

クライアントを支援しながらも、ときに揺さぶりをかけることもコーチの重要な役割です。

6. 具体的な事例:傾聴や共感をバランスよく使うコーチングセッション

6.1 ケーススタディ

クライアントの課題: 「新しいプロジェクトの責任者に抜擢され、不安でいっぱい」

  1. 傾聴フェーズ
    • クライアント: 「自分にはこのプロジェクトを成功させる自信がないんです」
    • コーチ: 「自信がないと感じているのですね。」
    • まずはクライアントの話を受けとめる
  2. 共感フェーズ
    • クライアントの気持ちに寄り添い、「自信がないと感じているのですね」と受けとめる
    • ただし深く同情しすぎないよう、「そのように感じている背景には何がありますか?」と問いを重ねる
  3. 思考を深める質問フェーズ
    • 「もし成功できるとしたら、どんなリソースやスキルが必要でしょうか?」
    • 「これまでの成功体験や、あなたの強みは何ですか?」
  4. 行動計画フェーズ
    • 「まず取り組むべき一歩は何でしょうか?」
    • 「その一歩をいつまでに実行するか、目標設定をしてみましょう」

このように、傾聴や共感はクライアントの状況や感情をしっかり受けとめるために必要な要素ですが、最終的には具体的な行動につなげることがコーチングの目的です。

7. まとめ:コーチングで傾聴や共感を「しない」のではなく「活かす」

「コーチングでは傾聴や共感をしない」と言われる理由は、傾聴や共感だけではクライアントの成長に十分貢献できないからです。コーチングの本質は、クライアントが自ら答えを導き出し、自律的に行動を起こす力を引き出すことにあります。

  • 適度な傾聴でクライアントの話をしっかり受けとめる
  • 行き過ぎない共感でクライアントの感情を認め、客観性を保つ
  • 挑戦的な問いかけやフィードバックで思考を揺さぶる
  • 具体的な行動に移すステップをサポートする

コーチングスクールでは、上記のスキルを体系的に学ぶことが可能です。もし「話を聞くのは得意だが、それ以上のサポートができていない」「優しさだけでセッションが終わってしまう」という方は、ぜひプロのコーチングスクールで学んでみてください。実践的なカリキュラムを通じて、効果的な傾聴と共感、そして質問やフィードバックの技術を身につけられます。


 執筆:鈴木敦子

8. 今後の学習・実践に役立つヒント

  • コーチングスクールの選び方
    • コーチング理論だけでなく、実践練習やフィードバックが充実しているか
    • 現役コーチによる指導があるか
  • 書籍やオンライン動画を活用
    • 基礎知識を得る手段として書籍や動画は手軽
    • 実際のセッション例があるコンテンツは理解が深まりやすい
  • 日常生活での練習
    • 同僚や部下、友人との会話で「質問」を意識してみる
    • 相手の話を遮らずに聞き、問いかけを行うだけでも効果を実感できる


エッセンシャルコーチングクラスについて

当スクールのコンテンツは、講師陣が15年以上の実践で成果を出し続けた内容を盛り込んでいます。実際の現場で、活用独自プログラムを提供しています。

<手に入る三つの成果>

1.なりたい自分になる方法
自分の内側に発生する感覚を捉え、言語化していくエクササイズを多数用意しています。クラスで学びあうプロセスを経て、なりたい自分になるための手法を習得してもらいます。

2.継続的な成長を実現する習慣
コーチングを習得する過程を経て、進化し続ける習慣を醸成していきます。7カ月の学習期間は、対面学習だけでなく、オンラインでの振り返りがあります。そして毎月の課題に取り組むことで、自身をバージョンアップし続けることができます。

3.継続的な成長を支えるチーム
私たちの学習コミュニティは、関係そのものを変化させることにフォーカスしています。そのため、協力、共感、協調、協働が自然と育まれます。共に成長し続けるチーム感を体感してしていただきたいと考えています。。
効果的なチームワークは、個々の能力を超えて目標を達成する傾向があります。それは、力強い味方となるでしょう。クラス修了しても成長し続ける関わりが手に入ります。

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