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1on1で主体性を育てる質問例|上司が使える問いかけテンプレート

1on1の質問例_アイキャッチ

目次

1on1を続けていても、進捗確認や課題共有だけで終わると、部下の主体性は育ちにくくなります。

話す内容が「報告」と「助言」に偏ると、面談は確認にはなっても、考える場にはなりません。必要なのは、上司がうまく話すことではなく、部下が自分の考えを言葉にできる問いを置くことです。

本記事では、1on1で主体性を育てるための質問を、面談の流れに沿った基本テンプレートと、状況別に使える補助テンプレートに分けて整理します。

管理職としての全体像を先に整理したい場合は、関連記事「部下の主体性を引き出すマネジメントとは|上司が変えるべき関わり方」から読むと位置づけがつかみやすくなります。フィードバックの設計まで見直したい場合は記事7、優秀だが受け身な部下への見立てを深めたい場合は記事8がつながります。

1on1で主体性が育つ理由

1on1が主体性に働きかける3つの理由を示す整理図

1on1が主体性に働きかける理由は、大きく三つあります。思考整理の場になること、問われることで自分の意思に気づけること、日常では不足しがちな考える時間を補えることです。

1on1は、報告の場ではなく思考整理の場

主体性が育つ1on1は、単なる進捗確認の場ではありません。

部下が現状を整理し、何に迷い、何を重視し、どこで止まっているのかを言葉にする場です。頭の中にある考えは、話しながら形になります。1on1には、思考の整理を支える役割があります。

日常業務の中では、判断と処理が優先されがちです。立ち止まって考える時間は意外と少なくなります。1on1が機能すると、普段は流れてしまう迷いや違和感を扱いやすくなります。

問われることで、自分の意思に気づきやすくなる

主体性は、外から与えられるものではありません。

自分はどう考えているのか、何を大事にしたいのか、どの選択肢が納得しやすいのか。こうした内側の感覚に気づくことで、行動の主語が戻ってきます。

良い問いは、正解を当てさせるために使うものではありません。考えを整理し、意思を見えやすくするために使います。上司の助言より、本人の言葉が増える場のほうが、主体性は育ちやすくなります。

日常のマネジメントで不足しがちな「考える時間」を補える

現場では、急ぎの仕事、調整、報告、判断が続きます。その中で、部下が仕事の意味や進め方を落ち着いて見直す時間は多くありません。1on1は、その不足を補う場になります。

特に受け身が強く見える部下ほど、意欲がないのではなく、考える時間が足りない場合があります。1on1は、そうした状態を見立てる入口にもなります。

主体性を育てにくいNGな問いかけ

主体性を育てにくいNGな問いかけの4分類図

答えを誘導する質問

1on1で避けたいのは、上司の正解に寄せる質問です。

「こうしたほうがよいと思わないか」といった聞き方は、質問の形を取っていても、実際には答えを誘導しています。「先に相談すべきだったのではないか」も同様です。誘導の問いが続くと、部下は考えるより、上司の意図を探すようになります。

主体性を育てるには、「何が正解か」を当てさせるのではなく、「どう考えているか」を言葉にしてもらうことが必要です。

詰問のように聞こえる質問

「なぜできなかったのか」「どうしてやらなかったのか」という聞き方は、相手を守りの姿勢にしやすくなります。

背景を知りたい意図があっても、責められているように聞こえると、防衛反応が先に立ちます。考えを整理する場ではなく、言い訳を探す場に変わりやすくなります。

原因を知りたい場面では、問いの角度を少し変えることが有効です。「どこで止まりましたか」「何が判断を難しくしましたか」といった聞き方のほうが、事実に近づきやすくなります。

抽象的すぎる質問

「もっと主体性を持つにはどうすればよいか」と直接聞いても、答えは出にくくなります。問いが大きすぎるためです。部下は何から話せばよいか分からず、まとまりのない返答になりやすくなります。

有効な方法は、具体的な場面に引きつけることです。「今の案件では、どこに判断の余地がありそうですか」「次回は何を自分で決められそうですか」といった問いのほうが、考えやすくなります。

上司が話しすぎる進行

質問そのものが悪くなくても、進行の仕方で1on1は機能しなくなります。

一つ質問したあと、すぐに上司が持論を話し始める。部下の答えを最後まで聞かずに、結論へ進む。こうした進行では、面談は指導の場になり、思考整理の場になりません。

面談の質を見るときは、質問内容だけでなく、誰の言葉が多かったかも確認したい点です。主体性が育つ場では、部下の発話量が自然と増えていきます。

1on1の流れに沿った基本の質問テンプレート

1on1の流れに沿った基本の4ステップ図

現状を整理する質問

1on1の冒頭では、いきなり解決策に入らないことが大切です。まずは、何が起きているのか、本人がどこを気にしているのかを整理します。現状認識がそろうと、その後の質問が深まりやすくなります。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • 今、いちばん気になっている仕事は何ですか
  • 最近の仕事で、順調に進んでいることは何ですか
  • いま引っかかっている点はどこですか
  • 想定と違っているのはどの部分ですか
  • 今の状況を一言で言うと、どんな状態ですか

この段階では、評価や助言を急がないことが重要です。部下の見えている景色を先に言葉にしてもらうことで、面談の土台が整います。

考えを深める質問

現状が整理できたら、考えを深める質問へ移ります。この段階では、答えを求めるのではなく、選択肢や判断軸を言葉にしてもらいます。部下の思考が動き出すのは、ここからです。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • いまの状況をどう捉えていますか
  • どんな選択肢がありそうですか
  • その中で、いちばん現実的なのはどれですか
  • 判断するときに大事にしたいことは何ですか
  • その考えに至った理由は何ですか
  • 他に見落としている視点はありそうですか

大切なのは、「どう思うか」で止めないことです。理由や基準、優先順位まで言葉にできると、部下の考えは一段深まります。

内発的動機を探る質問

主体性は、正しい答えが見つかったときだけ育つわけではありません。仕事の中に、自分なりの意味、成長実感、貢献感が見えるときに育ちやすくなります。1on1では、その感覚を探る問いが有効です。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • 最近の仕事で、少しでも面白いと感じた場面はありましたか
  • 今の仕事で、伸ばしたい力は何ですか
  • 誰の役に立てたと感じると、手応えがありますか
  • 今の仕事の中で、自分らしさが出るのはどんな場面ですか
  • 続けて取り組みたいと思える仕事には、どんな要素がありますか

すぐに答えが出ないこともあります。それでも、何に意味を感じるのかを探る時間があると、仕事は少しずつ自分ごとになっていきます。

次の行動を決める質問

話して終わるだけでは、1on1の内容は日常業務へつながりにくくなります。最後に次の行動を一つ明確にすることで、面談の価値が実務へ結びつきます。大きな目標ではなく、次回までに試せる小さな行動が適しています。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • 次に一つ試すとしたら、何から始めますか
  • 次回までに、どこまで進めるとよさそうですか
  • まず着手しやすい一歩は何ですか
  • 進めるうえで必要な支援は何ですか
  • 終わったあと、どこを振り返りたいですか

上司が結論を決めてしまうと、主体性は戻りにくくなります。行動の主語を部下側に残すことが、面談終盤での重要な姿勢です。

状況別に使える補助テンプレート

状況別に使う補助テンプレートの4タイプ図。「指示待ちが強い部下」「自信がなく動けない部下」「優秀だが受け身な部下」「方向性に迷っている部下」を整理。

指示待ちが強い部下への質問

指示待ちが強い部下は、「どうしたいか」を問われても答えにくいことがあります。自分の案を持つ経験が少ないためです。すぐに自立を求めるより、選択肢や判断材料を整理する問いから入ると進めやすくなります。

一方、自信がなく動けない部下とは背景が異なります。指示待ちの場合は案を出す練習が必要であり、自信のなさから動けない場合は動ける単位を見つけることが先です。混同しないよう、普段の様子から見極めることが重要です。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • 今の時点で、どんな進め方が考えられますか
  • 仮に一つ選ぶとしたら、どの案を取りますか
  • そう考えた理由は何ですか
  • 判断するために足りない情報は何ですか
  • 先に確認したい点はどこですか

最初から完成度の高い答えを求めないことが大切です。自分の案を出す経験を積み重ねることが、主体性の土台になります。

自信がなく動けない部下への質問

動けない背景に不安がある場合は、問いの目的が変わります。考えの深さより、まず動ける単位を見つけることが優先です。

指示待ちの部下と見た目は似ていますが、案がないのではなく、失敗への不安から行動に移せない状態です。大きな判断を迫るより、小さく試せる範囲を一緒に見つける問いが機能します。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • どの部分が不安につながっていますか
  • いちばん小さく試せる形にすると、何ができそうですか
  • 今の状態でも進めやすい一歩は何ですか
  • 支援があると進みやすい部分はどこですか
  • まず確認できることは何ですか

勢いづける励ましより、動ける単位を明確にする問いのほうが機能しやすくなります。

優秀だが受け身な部下への質問

成果は出しているのに、自分からは動かない。こうした部下には、能力不足ではなく、裁量感や意味づけ、期待とのずれが隠れている場合があります。通常の指示待ち対応と同じ問いでは、表面しか見えないことがあります。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • 今の仕事で、任されている感覚はありますか
  • 進め方について、もっと工夫できそうだと感じる場面はありますか
  • 本当は変えたいと思っていることはありますか
  • 求められている役割と、自分の感覚にずれはありませんか
  • 力を出し切れていないと感じる場面はありますか

このテーマは見立てが難しいため、深く整理したい場合は関連記事「優秀なのに受け身な部下はなぜ生まれる?|隠れた主体性の見つけ方と育て方」とあわせて読むと判断しやすくなります。

方向性に迷っている部下への質問

情報はあるのに、優先順位が決まらず、動きが止まる部下もいます。こうした場合は、能力や意欲の問題というより、判断軸の整理が必要です。目的、優先順位、曖昧さの場所を見えるようにする問いが役立ちます。

使いやすい質問例は、次の通りです。

  • 今の仕事で、いちばん優先したいことは何ですか
  • 何を基準に判断すると、進めやすくなりそうですか
  • 今の業務の目的を一言で言うと何ですか
  • どこが曖昧だと感じていますか
  • いま整理できていることと、整理できていないことは何ですか

迷いが強いときほど、抽象的な励ましではなく、整理の順番をつくる問いが効果を持ちます。

面談後のフォローで主体性を定着させる

面談後のフォローで主体性を定着させる3ステップ図。「次の行動を一つ決める」「上司が答えを回収しすぎない」「振り返りの質をそろえる」を示す。

面談の最後に、次の行動を一つ決める

1on1で良い話ができても、面談の場で終わると変化は定着しにくくなります。次回までに試す行動を一つ決めることが大切です。行動が小さいほど、実行率は上がります。

「提案を一つ持って相談する」「目的を確認してから着手する」など、具体的な一歩へ落とすことで、1on1の価値が日常へつながります。

上司が答えを回収しすぎない

1on1のあとに上司が細かく結論を回収しすぎると、部下は再び受け身に戻りやすくなります。面談で考えたことを、業務の中で試せる余白が必要です。

もちろん放置は適切ではありません。定期的な声かけや状況確認をしながらも、途中で答えを奪わない姿勢を保つことが支援の一部です。「どこまで進みましたか」より、「やってみてどうでしたか」と問いかける形が、主体性の定着を支えます。

振り返りの質をそろえる

次回の1on1では、結果だけでなく、考え方や試した過程も振り返ることが重要です。うまくいったかどうかだけを見ると、部下は成果だけを気にしやすくなります。

何を考えて動いたか、何が判断しやすかったか、どこで止まったかまで確認できると、次の学びが残ります。振り返りの質は、フィードバックの設計ともつながります。日常の伝え方まで見直したい場合は、関連記事「フィードバックが部下の主体性を殺している——正しい『承認』と『評価』の違い」が参考になります。

まとめ|1on1は「教える場」ではなく「考えを育てる場」

良い1on1は、部下の言葉を増やす

1on1の質は、上司がどれだけ良い助言をしたかではなく、部下がどれだけ自分の考えを言葉にできたかで見えてきます。主体性は、考えを整理し、意思を自覚し、小さな行動へつなげる場で育ちやすくなります。

質問の質が、主体性の育ち方を変える

誘導する質問、詰問のような質問、抽象的すぎる質問では、主体性は育ちにくくなります。現状を整理し、考えを深め、意味を探り、次の行動へつなげる質問があると、1on1は報告会から思考の場へ変わります。

次に読むべき記事

管理職としての全体像から整理したい場合は、「部下の主体性を引き出すマネジメントとは|上司が変えるべき関わり方」が土台になります。

1on1だけでなく、日常のフィードバックや評価の伝え方まで見直したい場合は、「フィードバックが部下の主体性を殺している——正しい『承認』と『評価』の違い」へ進むと理解が深まります。

成果は出ているのに受け身な部下への対応を深く整理したい場合は、「優秀なのに受け身な部下はなぜ生まれる?|隠れた主体性の見つけ方と育て方」が次の一歩になります。

1on1の質問の使い方を実務に落とし込みたい方には、個別の体験セッションや管理職向け対話研修もご活用ください。

講師紹介

執筆
原田大輔/鈴木敦子

編集
鈴木敦子

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