コーチングは、スポーツコーチから派生した、コミュニケーションの技術です。
コーチを受ける対象をクライアント、コーチングのアプローチを活用して関わる人をコーチと表現します。
近年、ビジネス領域においてコーチングが注目されています。とくに、部下のマネジメントや成長支援に関わる管理職にとって、コーチングスキルは重要となるでしょう。
本記事では、なぜ管理職にコーチングスキルが必要なのか。そして、ビジネスの現場でのコーチングスキルの活用方法を解説します。
コーチングを学ぶと、対人コミュニケーションの仕組みが理解できる
はじめに、コーチングとは何をすることなのかを解説します。
実は、「コーチングとは何か?」という共通の定義は存在しません。組織や団体の解釈で、さまざまな認識が広がっている状態です。
ICF(国際コーチング連盟)では、コーチングを次のように定義しています。エッセンシャルコーチングクラスでも、ICFの定義を大切にしています。
思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くこと
対話を重ね、クライアントに柔軟な思考と行動を促し、ゴールに向けて支援するコーチとクライアントとのパートナーシップを意味します。
つまり「コーチングができる」とは、他者に対して思考を刺激し続ける創造的なプロセス(コミュニケーション)を実践し、他者が自身の可能性を公私において最大化させるような関わりができることです。そのためのスキルをコーチングスキルと呼びます。
コーチングスキルとは、対人コミュニケーションの仕組みや他者との関係をつくるプロセスを理解し、対話を通して他者と適切な関係性を構築することをいいます。
コーチングスキルを学ぶというと「プロのコーチになるため」というイメージが浮かびます。しかし、世の中の対人トラブルの多くが、コミュニケーションの意図が伝わらない・受け取れないという、「コミュニケーションのズレ」によって生まれます。相手にとっても自分にとっても心地よいコミュニケーションのために、多くの人がインプットしてほしいスキルなのです。
とくに管理職は、多くの他者と関わります。1人ひとりの他者が動くことにより、組織として目的を達成します。管理職の役割は、他者支援といってよいでしょう。他者は自分が思うとおりに動いてくれるものではありません。
他者が主体性を持って動くためには、対人コミュニケーションの仕組みや他者との関わりの知識や方法論を体系化したコーチングスキルを身につけることが効率的といえます。
ビジネスにおけるコーチングスキルの重要性
では、具体的にコーチングスキルはビジネスの現場でどのようにいかせるのでしょうか。
複雑化するビジネス環境では、リーダーシップの役割も多岐にわたり、単に指示を出すだけでなく、部下や共に働く人たちの能力を引き出すことが求められます。
また、グローバル化やリモートワークの普及により、多様なバックグラウンドやスキルを持つ人々が一緒に働く機会が増えています。1on1などの個別の面談の場で、マネジメント層やリーダーは、部下に対して適切な関わりを持つことが求められています。
個人個人の価値観、考え方、行動パターン、物事の受け止め方、情報処理の仕方にあわせてアレンジできるコーチングスキルは、他者支援を行う職種にとって、必須のスキルといえるでしょう。
コーチングスキルの活用による効果を、3つ紹介します。
パフォーマンス向上
コーチングスキルを持つリーダーは、チームメンバーのパフォーマンスを最大化できます。これにより、個人の成果が向上し、組織全体の生産性も向上します。
エンゲージメントの向上
コーチングによって従業員の自己効力感や満足度が高まり、エンゲージメントが向上します。エンゲージメントが高い従業員は、離職率が低く、業務に対するコミットメントも強いです。
イノベーションの促進
コーチングは個々の創造性を引き出し、チーム全体での問題解決や新しいアイデアの創出を促進します。
このように、コーチングスキルは人と人の関わりが存在するシーンすべてで活用できます。
コーチングスキルを活用し職場の対人トラブルを解消する
コーチングスキルは、職場での対人トラブルでも活用できます。
人間関係に起因する生産性や従業員のモチベーション低下は、大きな問題です。対人関係のトラブルの背景には、コミュニケーションの不足や誤解、価値観の違いなどがあり、業務の円滑な進行を妨げることがあります。とくにチームワークが求められる環境では、対人トラブルが発生するとプロジェクトの進行が遅れたり、パフォーマンスが低下するでしょう。
多様なバックグラウンドを持つ人材が増えてくると、価値観や働き方に対する考え方が異なることが当たり前となります。価値観が近い人ばかりの環境であれば、「空気を読む」「察する」といったコミュニケーションが成立していました。
しかし、多様性が前提の環境では、お互いに適切なコミュニケーションを行わなければ、誤解が生じ、対人トラブルにも発展しやすくなります。
また、リモートワークの普及により、直接顔を合わせる機会が減少し、コミュニケーションの質の低下が問題視されています。このような状況下で、対人トラブルを未然に防ぎ、万が一トラブルが発生した場合には迅速に解決するスキルが求められています。
コーチングは、対話を通じて相手の自己理解を促し、自己解決力を高めるアプローチです。次のようなアプローチで、職場の対人トラブルを解消できます。
傾聴
トラブルの当事者、双方の話をじっくりと聞き、相手の立場や感情を理解します。これにより、誤解や偏見を取り除くことができます。
フィードバック
具体的かつ建設的なフィードバックを行い、問題の根本原因を共有します。非難や責任転嫁ではなく、改善点に焦点を当てることが重要です。
目標設定
トラブル解消に向けた具体的な目標を設定し、双方が同意する形で行動計画を立てます。これにより、解決に向けた明確な道筋が示されます。
フォローアップ
計画の進行状況を定期的に確認し、必要に応じてサポートを提供します。これにより、トラブルが再発するリスクを減少させ、持続的な改善が図られます。
管理職がコーチングスキルを学ぶメリット
管理職層やリーダーがコーチングスキルを学ぶことは、他者支援だけでなく、自分自身のスキルやモチベーション維持にもつながります。
コーチングスキルを学ぶメリットには、次のようなものがあります。
セルフマネジメント力の向上とストレスの軽減
コーチングスキルを学ぶことで、管理職は自己管理能力を高めることができます。自身の感情やストレスのコントロール方法を習得することで、冷静な判断が可能となり、適切な対応ができるようになります。また、効果的なタイムマネジメントや優先順位の設定も学ぶことで、業務効率が向上し、過度なストレスから解放されます。結果として、健全なメンタルヘルスを維持しながら、チームをリードする力が強化されます。
部下の成長と自律性の促進
コーチングスキルは、部下の潜在能力を引き出し、成長を促進するための強力なツールです。管理職は部下との対話を通じて、彼らの強みや課題を明確にし、自己解決力を高めるサポートができます。このアプローチにより、部下は自律的に行動し、責任を持って業務に取り組むようになります。自主性が高まり、個々の能力が向上することで、チーム全体の生産性と効率が大幅に改善されます。
自己成長と効果的なリーダーシップの実現
コーチングスキルを身につけることで、管理職自身の成長も期待できます。新たな視点やスキルを学ぶことで効果的なチーム運営が可能となります。多様なメンバーと信頼関係を築き、モチベーションを高める方法を理解することで、リーダーとしての影響力が強化されます。また、自己成長を続けることで、常に最新の知識やスキルを取り入れ、変化する環境にも柔軟に対応できるリーダーへと進化します。
このように、管理職がコーチングスキルを学ぶことは、セルフマネジメント力の向上やストレスの軽減、部下の成長と自律性の促進、そして自己成長と効果的なリーダーシップの実現に大きなメリットをもたらします。
コーチングスキルを学び、部下とのコミュニケーションを変えよう
管理職がコーチングスキルを身につけると、対人コミュニケーションの仕組みが理解でき、部下に対して適切な関わりができることを解説してきました。
管理職として、部下の能力を引き出したい、1人ひとりが自発的に活動する組織をつくりたいという方は、ぜひコーチングスキルを学んでみてはいかがでしょうか。
【「一生モノ」のコーチングスキルを身につける】
コーチングスキルは、資格のように一度勉強すれば身につくスキルではありません。毎日の他者との関わりを積み重ね、深めていくスキルです。そのためには、情報のインプットだけでなく、実践を通してコーチングスキルを自分のものにする必要があります。
エッセンシャルコーチングスクールは、講師との個別面談や、受講生同士のコーチングセッションなどの実践プログラムが充実した、超実践型・コーチングスクールです。
執筆:鈴木敦子 編集:水谷 真智子 |
エッセンシャルコーチングクラスについて
当スクールのコンテンツは、講師陣が20年以上の月日をかけて実践で成果を出してきた内容を加え、独自プログラムを提供しています。
<手に入る三つの成果>
1.なりたい自分になる方法
自分の内側に発生する感覚を捉え、知覚を言語化していくエクササイズを多数用意しています。クラスで学びあうプロセスを経て、なりたい自分になるための手法を習得してもらいます。
2.継続的な成長を実現する習慣
コーチングを習得する過程を経て、進化し続ける習慣を醸成していきます。7カ月の学習期間は、対面学習だけでなく、オンラインでの振り返り、毎月コンスタントに出される課題に取り組むことで、自身をバージョンアップし続けることが身につきます。
3.継続的な成長を支えるチーム
私たちの学習コミュニティは、関係そのものを変化させることにフォーカスしていくため、協力、共感、協調、協働が自然と育まれます。そのため、共に成長し続けるチーム感が高まります。効果的なチームワークは、個々の能力を超えて目標を達成するための力強い味方となるでしょう。クラス修了しても成長し続ける関わりが手に入ります。